糖質制限はどんな病気に有効なのか

コラム

【糖質制限基本の「き」・25】

こんにちは。株式会社アスクレイ代表取締役 医学博士 松田 俊哉です。

現代の食生活は、炭水化物の摂取量が過剰であることが多く、これがさまざまな健康問題を引き起こす原因となっています。
今回は糖質制限がどのような病気に有効なのかをお伝えしようと思います。

糖尿病(2型糖尿病)

糖質制限をすることで、糖尿病の改善が期待できます。

糖尿病は、インスリンという血糖を下げるホルモンの不足や作用の低下によって、血糖の上昇を抑えることができなくなり、高血糖状態が続く病気です。
そのため、糖尿病では血糖値のコントロールが重要です。

糖尿病の治療には、食事、運動、薬が重要とされています。
しかし、毎日栄養バランスを考え、カロリーを計算した食事療法を守り、運動をしていても血糖値がうまくコントロールできないこともあります。

糖質制限を行い、糖質の摂取量を減らすことで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
これにより、糖尿病の症状を改善することが期待されます。

中性脂肪

糖質制限は、中性脂肪の減少にも有効です。

中性脂肪が高いというのは、血液中の中性脂肪の量が増え過ぎている状態のことです。

ご飯やパン、麺類、お菓子などの炭水化物を多く摂ると、血糖値が急上昇します。
この時、血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが多量に分泌されます。
インスリンは血液中に増加したブドウ糖を筋肉や肝臓にため込む働きがありますが、肝臓や筋肉がいっぱいになると、インスリンは余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞にため込むようになります。

このようにインスリンの働きによって血糖値は下がりますが、必要以上にインスリンが分泌されてしまうと、中性脂肪がどんどん増えてしまいます。

中性脂肪が高いと、肥満、高血圧、心血管疾患などの生活習慣病を引き起こす原因となります。
また血管の老化である動脈硬化を加速させてしまします。

糖質制限を行うと、体内の血糖値が上昇しにくくなり、インスリンの分泌量が抑制されます。
これにより、脂肪細胞での脂肪の分解や、肝臓での脂肪の燃焼が増えます。

さらに、糖質制限によって糖の摂取量が減少するため、体内の糖が不足します。
この時、体の中では主なエネルギー源である糖(ぶどう糖)が足りないため、体内に蓄積されていた中性脂肪を分解し、ぶどう糖に変換してエネルギー源として利用し始めます。
結果、中性脂肪の減少につながります。

脂肪肝

脂肪肝とは、余分な糖質や脂質が中性脂肪に変わり、肝臓に蓄積された状態です。
この状態は、肝臓が脂肪を適切に代謝できないために起こります。

食事で摂った脂質や糖質は、それぞれ分解されて脂肪酸、ブドウ糖になり、体に必要な様々なエネルギーに変わります。
摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れていれば大丈夫なのですが、脂質や糖質を摂り過ぎている、運動不足などの場合に、使いきれなかった脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられます。

脂肪肝の多くは放置すると肝臓の機能悪化や肝炎・肝硬変などの深刻な病気に進展します。
また、生活習慣病のである脂質異常や糖尿病を誘発して、動脈硬化を進行させるリスクが高まります。

脂肪肝の原因のほとんどは食べ過ぎとお酒の飲み過ぎとされており、改善するには食事や運動など生活習慣を見直すことが必要です。
体に余分な糖質は肝臓で中性脂肪に変えられるため、糖質を制限するだけでも脂肪肝が改善することがあります。
特にジュースや菓子などに含まれるショ糖は、中性脂肪が肝臓にたまりやすいため摂取しないようにしましょう。

高コレステロール血症

次の3つのうち1つでも当てはまると脂質異常症と診断されます。

・LDLコレステロール(悪玉コレステロール): 140mg/dL以上
・トリグリセライド(中性脂肪): 150mg/dL以上
・HDLコレステロール(善玉コレステロール): 40mg/dL未満
 (いずれも空腹時の血清中濃度)

このうち、「高コレステロール血症」とは、血液中のLDLコレステロールが140mg/dL以上の状態です。
その原因は、食べ過ぎ・運動不足・喫煙・ストレスなど生活習慣によるところが大きく、生活習慣病とも言われています。

高コレステロール血症を放置すると、増えた脂質がどんどん血管の内側に溜まって動脈硬化の進行を促進してしまい、ついには心筋梗塞脳梗塞の発作の原因となってしまいます

高コレステロール血症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が基本です。
生活習慣改善の主な内容は、禁煙、バランスのとれた食生活、適正体重の維持、適度な運動です。
LDLコレステロールはエネルギー源ではないので、運動で燃やしても減らすことは出来ません。
ただし、持続的な運動によって中性脂肪は下がり,善玉であるHDLコレステロール値は上がります。
食事療法についても、食事中のコレステロールを制限しても、血液のLDLコレステロール値はわずかにしか下がらないのです。

糖質制限を行っても、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は上昇しますが、LDLコレステロールが上がるか下がるかははっきりとは分かりません。
ただし、太っている場合に痩せると血中のLDLコレステロールが下がることが良くあります。
ですので、糖質制限によって痩せることでLDLコレステロールが下がるということは期待できるのではないでしょうか?

また糖質が少ないナッツ(特にクルミ)を摂取すると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)やTC(総コレステロール)に改善が生じることが複数報告されています。
糖質制限を実施する中で、クルミを摂取することを心がけると良いかもしれません。

次回のコラムでは、「カロリー制限と糖質制限」についてお話します。 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
糖質制限アプリは、皆様の糖質制限生活を応援しています。

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