理想的な栄養バランスとは

コラム

【糖質制限基本の「き」・27】

こんにちは。株式会社アスクレイ代表取締役 医学博士 松田 俊哉です。

今回は理想的な栄養バランスについてお話します。
理想的な栄養バランスとはどのようなものなのでしょうか。
今回はいつもより少し長いですが、お付き合いください。

糖質は食事で摂らなければならないのか

食事で糖質を摂らなければならないと言われる方がいらっしゃいますが、それは果たして本当でしょうか?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、日本人の理想的な食事の栄養バランスとして、1日に必要なエネルギーの50~65%を炭水化物から、13~20%をタンパク質から、20~30%を脂質から摂ることを推奨しています。

ただし、その「日本人の食事摂取基準(2020年版)」中の炭水化物の説明で、

「糖質の最低必要量はおよそ 100 g/日と推定される。しかし、肝臓は、必要に応じて筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶどう糖を供給する。したがって、これは真に必要な最低量を意味するものではない。」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.153

と掲載しています。

また、指標設定の基本的な考え方の項では、

「炭水化物、特に糖質は、エネルギー源として重要な役割を担っているが、上述のようにその必要量は明らかにできない。また、通常、乳児以外の者はこれよりも相当に多い炭水化物を摂取している。そのため、推定必要量を算定する意味も価値も乏しい。さらに、炭水化物が直接に特定の健康障害の原因となるとの報告は、2型糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しい。そのため、炭水化物については推定平均必要量(及び推奨量)も耐容上限量も設定しない。同様の理由により、目安量も設定しなかった。」

「単糖及び二糖類、すなわち糖類の過剰摂取が肥満やう歯の原因となることは広く知られている(中略)我が国でもその過剰摂取に注意すべき状態であるおそれが示唆されている」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.153~154

とあります。

糖質は体内で合成されないので、理論的には食事での糖質の摂取量が0であれば血糖値は0になります。
しかし、どんなに糖質を厳しく制限しても摂取量は0にはならないので、糖尿病の治療を受けていなければ、低血糖を起こすことはまずありません。

また、普段は糖質が体のエネルギー源となっていますが、糖質の摂取量が減ると、体内で蓄えられた脂肪が燃焼されてケトン体というエネルギー源を生み出します。

食事で糖質を摂らないと脳が働かないと考える人もいますが、以上のことからそれは間違いだということがわかります。

脂質の摂りすぎは健康に悪いのか

また食事での糖質の摂取を減らすとその分脂質が増え、その脂質が健康に悪いと考える人も多いです。

しかし、近年では食事の脂肪を減らしても健康に良い影響はないことが明らかになってきています。
2011年のアメリカ心臓病学会の科学声明で脂肪摂取を少量にするよりも、中等量にしていたほうが血中の中性脂肪値が良好である旨の記載がされています。
ですので、糖質制限の結果、脂肪摂取量が増加しても心配いらないと考えられます。

正しい栄養バランスとは

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で、炭水化物の目標量の策定方法については、

「たんぱく質の目標量の下の値(13又は15%エネルギー)と脂質の目標量の下の値(20% エネルギー)に対応する炭水化物の目標量は67又は65%エネルギーとなるが、上記の理由(糖類の過剰摂取に注意すべき状態にある)のために、それよりもやや少ない 65%エネルギーを目標量(上限)とすることとした。したがって、たんぱく質、脂質、炭水化物のそれぞれの目標量の下の値の合計は 100%エネルギー にはならない。」

「目標量(下限)は、たんぱく質の目標量の上の値(20%エネルギー)と脂質の目標量の上の値(30%エネルギー)に対応させた。ただし、この場合には、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に注意すべきである。」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.154

とあります。

つまり、一日に必要なエネルギーから、たんぱく質と脂質で最小限摂らなくてはならない量を差し引くと、糖質で摂らざるを得ないエネルギーが求まるという考え方をした場合、糖質が50~65%必要となるとあるのです。

また概要欄には、以下のような記載もあります。

「糖類の過剰摂取が肥満やう歯の原因となることは広く知られているが、日本人の糖類の摂取量の把握が現状では困難であることから、目標量は設定しなかった。」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.159

脂肪酸の目標値については、

「飽和脂肪酸摂取量をどの程度に留めるのが好ましいかを決める科学的根拠は十分ではない。」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.133

としており、目標量の策定方法にも、

「既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難である。そこで、日本人が現在摂取している飽和脂肪酸量を測定し、その中央値をもって目標量(上限)とすることにした。」

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.133

とあります。
つまり糖質、脂質どちらもはっきりとした目標値は示せないということです。

また、アメリカの医学アカデミーはたんぱく質、脂質いずれについても最大耐用量(これ以上摂取してはいけないという量)は設定できないと明記しています。
そもそもたんぱく質や脂質を最小限に抑制しなければいけない理由はないからです。

このようによく言われる理想的な栄養バランスの値というものは、とても曖昧であることがわかります。
食事に糖質が必要であるというのは、これまでの食事習慣からくる思い込みだといえますし、糖質制限による脂質摂取量の増加も心配はいらないと考えられます。

それぞれの人の状態に一番良い栄養バランスを考えるのが必要であり、万人に向かって勧められる「理想的な栄養バランス」というものは存在しないのではないでしょうか。

次回のコラムでは、「人工甘味料の危険性」についてお話します。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
糖質制限アプリは、皆様の糖質制限生活を応援しています。

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